2025年4月も終わりに近づき、新年度が始まって約1ヶ月が経ちました。この時期、新しい環境に馴染めず退職を考える人も少なくありません。そんな中、近年急速に普及してきたのが「退職代行サービス」です。今回は増加の一途をたどる退職代行の実態や、使った人の体験談、業界の裏側まで徹底的に掘り下げていきます。
急増する退職代行サービスとそのカラクリ
退職代行とは、簡単に言えば「会社を辞めたいけど言い出せない人に代わって、退職の意思を会社に伝えるサービス」です。勤務先に退職の意思を伝えることができない従業員が、弁護士や代行業者に数万円の料金で依頼し、勤務先へ退職の意思を代わりに伝えてもらうというものです。
このサービスは2017年頃に初めてビジネス化され、「退職代行EXIT」が業界最古参と言われています。その後、「退職代行モームリ」「退職代行やめたらええねん」「退職代行トリケシ」「退職代行即ヤメ」「退職代行SARABA」など、ユニークな名前のサービスが次々と登場。今では年間1万件以上の相談が寄せられるほどの巨大市場に成長しています。
料金は一般的に3万~5万円程度。EXITの場合、アルバイトの退職は4万円、正社員の退職は5万円とのこと。依頼からの流れは、公式LINEへの登録→ヒアリングシートの記入→料金支払い→退職連絡の代行、という手順で進みます。
弁護士と一般業者の大きな違い
退職代行には「弁護士が運営するもの」と「一般企業が運営するもの」の2種類があります。この違いは非常に重要です。
弁護士による退職代行は、会社との交渉も可能です。たとえば、未払い残業代の請求や有給休暇の消化交渉なども行えます。一方、弁護士以外の代行業者は、「非弁行為」という法律の制限により、単に退職の意思を伝えるだけで、会社との交渉はできません。
「退職までの有給消化について交渉する」「残業代、退職金の額について交渉する」といったことは弁護士以外には禁止されているため、一般業者に依頼した場合は注意が必要です。
元社長が明かす!衝撃の裏話
退職代行サービスの創業者たちも、実はかなり苦労しているようです。
EXIT社の新野俊幸代表は、自身がサラリーマン時代に3回の退職を経験し、「上司に止められ、同僚に止められ、家族に止められ」と苦労したことから、このサービスを思いついたそうです。
サービス開始当初は月に1件あるかないかの依頼だったそうで、一番の苦労は「怒られた」ことだったとか。「『本人からもう連絡いきませんよ』『会社行きませんよ』と突然連絡するので、当然『ふざけるな』となる。『いやでもすいません、行けないんです』『いやいや困るから』みたいな感じでめちゃくちゃ怒られて、1時間ぐらいずっと説教される。依頼者の代わりに説教されるサービスみたいになっていました」と振り返っています。
さらに忘れられないエピソードとして、「優秀な大学生の子がうち(EXIT)に来たいと。『じゃあ採用します』と言って。4月1日の入社の日に彼が他社の退職代行でうち辞めたんです」と告白。しかし、「感想としては変な感情で、どちらかと言うと嬉しさが勝ったというか。自分が作ったサービスがマネされて、しかもウチに来たという。このなんか”広まった感”というか」と前向きに捉えたそうです。
現場から届く驚愕のエピソード集
「退職代行モームリ」の担当者が退職連絡をした際、「『お世話になります。退職代行モームリの…』と会社へ伝えた瞬間『お世話になんねえよ!!!!』ブチッ とカウンターを喰らい、お電話を切られたケース」があったそうです。その後何度かかけ直しても永遠につながらなかったとか。
こうした場合は「書面に切り替えて対応させていただくため、今回もそのような流れで対応し、依頼者の方の退職は確定しました」とのことですが、電話対応者が社長やオーナーの場合はつながらないケースが多い傾向にあるそうです。
他にも「退職届を目の前で破られた方」「退職する際に上司から『陰陽師代として120万円を支払え』と請求された方」「『ぶっ殺すぞ』『給料泥棒』『おい童貞』といった暴言を浴びせられた方」など、信じられないようなケースが多数報告されています。
退職代行を使った人の生々しい体験談
ある方は「1ヶ月前、急遽退職代行を使うことになりました。仕事を始めて11ヶ月。やりがいを感じることが難しく、叱られてばかりの毎日。自分ができないから悪いんだけど…と思う毎日」と苦悩を語ります。休日出勤や残業の常習化、帰りにくい職場の雰囲気に耐えきれず会社に相談しましたが改善せず、退職願を持って上司と社長に面会したものの「考え直してくれ」と受け取ってもらえなかったため、友人のアドバイスで退職代行を利用したとのこと。
また、「新卒と第二新卒とで2回とも退職代行で会社辞めた」という方もいます。「辞める時ほんとに精神的にきつくて会社に退職願い伝えるのも無理な状態だったからこういうサービス使って良かったし対応良かった」とその効果を実感しています。
「365日24時間やっているのは、ありがたいです。深夜に退職代行依頼をしましたが朝方に対応していただき退職する事ができました!」という声もあり、急に決断した場合でも対応してもらえる点が評価されているようです。
退職代行で失敗するケースとその回避法
退職代行を利用して失敗するケースもあります。「振込後に業者と連絡がつかなくなった」「退職代行で会社と連絡を取る羽目になった」「残業代・有給消化の交渉が出来なかった」「退職代行を利用後に会社とトラブルになった」「即日退職と書いてあったが実際はできなかった」などの事例が報告されています。
失敗を避けるためのポイントは、「口コミ」「実績」「料金相場」を事前に確認すること。また、交渉が必要な場合は「弁護士」または「労働組合」が運営する退職代行を選ぶことが重要です。
企業側の視点:退職代行を使われたらどうなる?
退職代行を利用する裏には、「今後の会社との紛争に備えておきたいとの思惑」があることも考えられます。特に「代行を弁護士に依頼している場合には、退職後に会社へ何かしらの請求を考えている可能性が高い」とされています。
考えられる請求としては、「ハラスメントを理由とする損害賠償請求や未払残業代の支払請求など」が挙げられています。
ただし、会社側としては退職代行であるからといって「退職の意思表示を無視することはNG」であり、特に正式に従業員から委任状を受けた弁護士からの通知であれば、退職の意思表示はほぼ間違いなく有効と判断されるでしょう。
退職代行の最新事例:意外な職種でも利用増加中
退職代行の利用は一般企業の社員だけではありません。「保育士が退職代行で学期途中退職」「公務員の退職代行事例」「保育園の園長の退職代行」「社長の暴力で退職したい会社専務の退職代行」など、あらゆる職種・地位で利用されているようです。
特に「名ばかりの役員で不当な扱いを受けていた依頼者の退職代行を支援。社員としての正当な評価と未払い給料、有給休暇全日数を消化の上、速やかに退職を実現しました」といった事例は、一見強い立場に見える人でも実は退職に苦労しているケースがあることを示しています。
最後に:退職代行を検討している人へ
EXIT代表の新野氏は「退職代行を使われてしまった時点で、経営者として空気の作り方を間違っている。退職という重要な事項を上の人に相談ができない。やっぱりおかしいと思う」と語っています。本来、退職は労働者の権利であり、スムーズに行えるべきものです。
しかし現実には、様々な理由で退職を言い出せない状況に追い込まれる人が後を絶ちません。そんな時、退職代行は有効な選択肢になるかもしれません。ただし、事前にサービス内容をよく確認し、自分のケースに適した業者を選ぶことが重要です。
「退職代行モームリ」運営者の言葉が印象的です。「本音を言えば、私たちのような退職代行サービスは、社会から無くなることが一番だと思うんです。けれど現状は、Z世代の方を含め、多くのビジネスパーソンが退職に伴い、苦しんでいる」。
退職代行というサービスが必要とされなくなる社会こそが理想ですが、それまでは「辞めたい」と言える勇気と、それを言えない時のセーフティネットの両方が必要なのかもしれません。