コメ価格がなぜ下がらない?令和の米騒動の裏側と現場のリアル

 「備蓄米が放出されたのに、スーパーのコメ価格は下がらない…」――2025年春、そんな声が日本中で聞かれています。実際、コメの店頭価格は1年前の約2倍、5キロで3500円~5000円台という“史上最高値”が続いています。なぜコメ価格は下がらないのでしょうか?その裏側には、意外なエピソードや業界の事情が隠れています。

コメ価格高騰の主な原因

  • 減反政策の長期的影響
    日本では50年以上にわたり、コメの生産量を意図的に減らす「減反政策」が続いてきました。これは米余りを防ぎ、価格を維持するための政策ですが、近年は水田の約4割が減反対象となり、生産量はピーク時の半分以下に。この“ギリギリの生産体制”が、ちょっとした需要増や不作で一気に品薄・高騰を招く土壌となっています。
  • 2023年の猛暑と“先食い”現象
    2023年の猛暑で一部地域の収量が減少し、さらに「南海トラフ地震臨時情報」発表時の買いだめ騒動も重なり、コメの在庫が一気に減少。その結果、2024年産の新米が出回る前に“先食い”され、2024年秋以降も供給が追いつかない状況が続いています。
  • インバウンド需要と家庭消費の増加
    コロナ禍明けの訪日外国人増加や、パン・麺類の値上がりによる“コメ回帰”で、外食・家庭ともにコメ需要が増加。これも需給バランスをさらに逼迫させました。
  • 流通の“目詰まり”と業者の心理
    政府が備蓄米を放出しても、集荷業者や農協が「高値で仕入れた米を安く売りたくない」と売り控えを行うケースが多発。また、品薄への不安から業者や家庭が“買いだめ”を続け、流通がスムーズに回らない“目詰まり”状態に。
  • “消えたコメ”21万トンの謎
    農水省も所在を把握できていない“消えたコメ”が21万トンあるとされ、投機目的の買い占めや流通在庫の偏在が疑われています。

現場のリアルなエピソード

  • おにぎり専門店の悲鳴
    都内のおにぎり専門店では、山形県産米の仕入れ値が高騰し、37品目のおにぎりを一斉値上げ。それでも利益はギリギリで「これ以上は耐えられない」と店主が嘆く場面も。
  • スーパーの“コメパトロール”
    「今日は2キロで1490円、5キロで3400円…高すぎて手が出ない」と、スーパーで価格を見比べる高齢者の姿が日常風景に。
  • 農家の複雑な心境
    「米価が上がっても、肥料や燃料のコスト増で手元に残る利益は増えない」と語る農家も多く、現場では“高値=バラ色”ではない現実が。

なぜ備蓄米を放出しても価格が下がらないのか?

  • 業者の“売り控え”
    備蓄米が市場に出ても、農協や集荷業者が自分たちの在庫を売り控えるため、全体の供給量が増えず、価格が下がりにくい。
  • “高値掴み”のジレンマ
    高値で仕入れた米を安く売ると赤字になるため、業者は値下げに消極的。結果として、安い備蓄米が出ても市場価格はなかなか下がらない。
  • 消費者・業者の“買いだめ心理”
    「また品薄になるかも」という不安から、業者も家庭も在庫を多めに持つ傾向が強まり、流通が滞る悪循環に。

今後の見通しと“裏話”

  • 減反政策の“本丸”は残ったまま
    2018年に「減反廃止」と発表されたものの、実際は生産を減らせば補助金が出る仕組みは温存されており、根本的な生産増にはつながっていません。
  • “消えたコメ”の行方は?
    一部では「転売業者が隠し持っている」「投機目的で倉庫に眠っている」など都市伝説的な噂も。農水省も調査に乗り出していますが、全容は未解明です。
  • “米価は下がるのか”の分かれ道
    もし農協や業者が一斉に在庫を放出すれば、5キロ2100円台まで下がる可能性もあると専門家は指摘。しかし、現状では“高止まり”が続く見通しです。

まとめ

 コメ価格が下がらない背景には、減反政策による生産抑制、猛暑や買いだめによる在庫減、業者の売り控えや流通の目詰まり、そして“消えたコメ”の謎など、複雑な要因が絡み合っています。消費者の「なぜ下がらない?」という疑問の裏には、業界の“本音”や現場の苦悩が隠れているのです。

今後、政策転換や流通の透明化が進まない限り、「令和の米騒動」はしばらく続きそうです。あなたの食卓のコメも、実は“日本の農政の縮図”なのかもしれません。

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