紅茶人気拡大の舞台裏  令和の「ティーブーム」を読む

紅茶がいま、なぜ熱い?最新トレンドの背景

 ここ数年、日本でも世界でも紅茶の人気が急拡大しています。コンビニやカフェチェーン、専門店はもちろん、SNSでも「アフタヌーンティー」や「おうちティータイム」が話題になり、ペットボトル紅茶やフレーバーティーの新商品が続々と登場しています。

コロナ禍と健康志向が生まれた新しい紅茶文化

 紅茶人気拡大の大きな課題のひとつが、コロナ禍による生活スタイルの変化です。 日本紅茶協会が実施したアンケートによると、「紅茶を何度飲んだことが増えた」と答えた人が53.4%、「いつも違う紅茶を買った」人が44.9%と、家庭で紅茶を楽しむ人が一気に増えました。

背景には「おうち時間」の増加と、健康意識のお話があります。紅茶には抗酸化作用や心臓の健康をサポートする効果があるとされ、リラックス効果や尿効果も期待できるため、「健康に良い飲み物」としてのイメージが定着しました。2019年には紅茶にインフルエンザウイルス不活化効果があるという情報も話題となり、「ウイルス対策に紅茶」という新たな消費動機も生まれたのです。

タピオカブームが若者を紅茶ファンに?

 もう一つの裏話が、2019年の「タピオカブーム」です。タピオカミルクティーをはじめとする茶系ドリンクが若者の間で大流行したことで、それまで「紅茶は大人の飲み物」と思われていたイメージが新しくなりました。台湾カフェや茶専門店が続々登場し、若年層が紅茶やお茶の美味しさに目覚めるきっかけになりました。

この「タピオカ効果」は、紅茶だけでなく抹茶やほうじ茶ラテなど、茶系飲料全体の市場拡大にも注目しましたが、特にミルクティー人気の再燃は紅茶ブームの基盤を作って考えてみようと思います。

コーヒーの陰りと紅茶の台頭――スタバも紅茶専門店へ

 紅茶人気の拡大には、ライバルであるコーヒー業界の事情も関係しています。 気候変動によるコーヒー豆の価格上昇や供給不安が続く中、カフェチェーン自体が紅茶に注力し始めました。 スターバックスは紅茶に特化した新店舗をオープンし、タリーズやコンビニ並も紅茶メニューを強化しています。

世界市場でも紅茶は最適調

 紅茶ブームは日本だけの現象ではありません。世界市場でも紅茶の人気は右肩上がりです。 2024年の世界紅茶市場規模は174.2億ドル、2025年には227.8億ドル、2032年には349.6億ドルに達する見通しで、年平均成長率は6%以上と堅調な成長が続いています。

特に健康志向の優先や、すぐに飲めるペットボトル紅茶(RTD:Ready To Drink)の需要拡大、フレーバーティーやプレミアムティーの登場が市場を牽引。北米や中国でも健康的な飲料として紅茶が注目され、年間消費量が増加しています。

日本紅茶ブームの裏話――「午後の紅茶」とアフタヌーンティー

 日本の紅茶文化を語る上で欠かせないのが、キリン「午後の紅茶」の存在です。 1986年の発売以来、ペットボトル紅茶市場を引っ張り、ティータイム文化を根付かせた主役。 実は「曇らないアイスティー」開発の裏には、当時の技術者たちの執念と失敗の連続がありました。

また、コロナ禍に向けて、女性を中心に「アフタヌーンティー」人気が再燃。SNS映えするスイーツやティースタンドが話題となり、ホテルやカフェでのアフタヌーンティー体験が「ご褒美時間」として準備しました。紅茶専門店やティーサロンも増え、紅茶の多様な楽しみ方があります。

紅茶の歴史と日本ならではのエピソード

 紅茶の歴史をひもとくと、17世紀に中国からヨーロッパへ渡り、イギリス貴族社会で人気があった。日本に紅茶が本格的に入ってきたのは明治時代。最初はイギリスからの輸入品で、上流階級のステータスシンボルでした。

面白い裏話として、11月1日は「紅茶の日」。 これは江戸時代の船頭・大屋光太夫がロシアの女帝エカテリーナ2世のお茶会に招かれ、日本人として初めて本格的な紅茶を飲むだ逸話に由来します。また、アメリカ独立のきっかけとなった「ボストン茶会イベント」も紅茶が主役です。

アレンジ紅茶やフレーバーティーの進化

 では、紅茶の楽しみ方も多様化。 レモンティーやミルクティーはもちろん、フルーツやハーブを加えたフレーバーティー、スパイスを使ったチャイ、さらには炭酸で割る「ティーソーダ」など、最近ではアレンジレシピがSNSで拡散中。 実はレモンティーやアイスティーはアメリカ生まれで、カリフォルニアの雑誌が「おしゃれな飲み方」として紹介したことで日本でもブームになったという裏話も。

また、ティーバッグやペットボトルなど、利便性を追求した商品が登場し、忙しい現代人にも紅茶が身近な存在となりました。

紅茶がもたらす「幸せな時間」とは

 紅茶の魅力は、未知の飲み物を超えた「体験」にあります。お気に入りの茶葉とティーカップでゆっくり過ごすひととき、家族や友人と語らうティータイム、ホテルで優雅なアフタヌーンティー。

まとめ:紅茶ブームはどこまで続く?

 紅茶人気の拡大は、健康志向やライフスタイルの変化、SNS映えや多様な商品展開、歴史ある文化の再評価、様々な課題が複雑に絡み合って起こる現象です。 今後も新たなアレンジや体験型サービス、地域ごとの個性派ティーが登場し、紅茶ブームはますます盛り上がっていくでしょう。

最後に、紅茶の歴史やエピソードに思いを馳せながら、ぜひ自分だけの「とっておきの一杯」を楽しんでみてください。紅茶は、あなたの日常に小さな幸せと豊かさをもたらしてくれるはずです。

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